| [449] もっとどうでもいい話だということは百も承知(爆
投稿者:理系の男
投稿日:2008/03/20(Thu) 19:26:09 |
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以下の原稿は、相当前に完成していたもので、444の投稿はこれを出したいがためのものであることはバレバレ(笑
October Country の誤植、および問題部分について
これまでの作業で、米文学史上最高の短編集(本気!)「The October Country」にもいくつか問題があることがわかってきました。内容的には3種類に分けられます。一つは、小説の構成自体に問題があるもの。これは、The crowd, The Small Assassin, There was an old womanなどで見られます。鑑賞にはあまり影響ないものから、後2者のように、白けて、削除したくなるものまであります。第2は、単純な論理的ミスや事実誤認です。ほしづるさまに教えていただいた、「太陽の黄金の林檎」の「零下千度」のようなものですね。The next in Lineの「デシベル」、The scytheの「エーカー」、The windの「ジンの遊び方」、などがこれにあたりますが、あまり鑑賞の妨げにはなりません。まあ、以上2つは作品自体の特徴であって、とやかく言うべきではないのでしょう。問題は第3の、単純な誤植です。容易に想像のつくスペルミスから、ちょっと苦しい行の入れ替わり、最悪な原稿用紙入れ替わりまで、いくつもあります。Ballantinde HC初版を基準に、この誤植の例をまとめてみました。
(A)Touched with fire Grandular deficiencies.→Glandular deficiencies (訳文213ページ) RとLを取り違えるとは信じられないミス。英版のPBでは初版から直っているので、なぜ米版PBで直っていないのかわからない。フランス語訳初版(1960年、この時点ではLに直った版は出ていない)ですら、glandularと解釈されている。宇野訳は、例によって名人芸でスルー。スウェーデン版ではFel pa kortlarnaとなっていて、わからず(爆)
(B)Jack-in-the-Box Sometimes he and Mother picnicked in the Highlands, spread cool snow linens on red- tuffed, Persian lawns(訳文286ページ) tuffed→tufted tとfは非常に似ていて(OCRソフトもよく間違える)調査には苦労しましたが、tuftedに直っている版はほとんどありません。
(C)Jack-in-the-Box World was abuilding under God's hand,(訳文296ページ) abuildingのaとbの間にスペースが抜けているわけで、活字の組み方によっては非常に微妙ですが、これも直っている版はほとんどない。
(D)Homecoming 訳本では460ページの「・・・と、とうさんが叫んだ。」の次に、461ページ12行目、「彼の周囲で行われているが」から462ページ13行目「いまもやっているかい、シシー?」までの部分に対応する文(タイプ原稿1枚分)がそっくり後ろに移動しています。文の途中から移動しているので、文頭が小文字で始まっている部分があり、すぐに誤植とわかります。この箇所、朗読版で聞くとすごく変なのですが、朗読者は何のためらいもなく読み進んでいます。さすがプロですな(?)。笑えることに、英版PBでは1961年の初版から、小文字で始まっている文章の直前のピリオドを削除し、文法的な辻褄を合わせたことにより、以後の英版はすべて誤りのまま放置されてしまいました。Gauntletの1999年の愛蔵版では、逆に文頭を無理やり大文字にして、辻褄を合わせています。つまり、変だということには気づいていたわけで、何してるんだ、って感じです。米版PBは1956年初版から直っているので、どうしたことでしょう。次の項にあるように、この作品は書き直されているのですが、そのバージョンでさえもこの部分は放置しているので、RBのこの作品にかける愛情を疑ってしまいます。
(E)Homecoming これは単純な誤植ではなく、改稿というべきなのでしょうが、とんでもない改悪、RBに魔が差したとしか思えませんので、誤植扱いとしました(苦笑) 1996年以降に出た米国の新装版(May I die before my voicesと題した前書きがついた)では、訳文で言うと、469ページ「ティモシーは歌った」から「唇から出た」までの6行分、およびその直後の「ティモシーは体をつかまれた」から470ページの「彼自身のからだにもどった」までの8行分がなくなっています。つまり、これらの版(RBによる決定版)で「集会」を読んだアメリカのRBファンにとって、ティモシーとシシーは永遠に仲直りしないまま終わっているのです!これはあまりに哀しすぎる・・・はろさまの情報では、これは初出(正確に言うと、オリジナルから『マドモアゼル』用に書き直した版)に戻したのだそうですが。勿論邦訳は旧いPBなので問題なし。
(F)Wonderful death of Dudley Stone ・・・・・・・・・ And on the empty scale dozen books. I made some minor adjustments. The sixty opposite I laid my pen, my ink, my empty paper, my seconds were ticking by. (改行位置はHCに従う)
何度か読み直せばわかるように、2行目と3行目が入れ替わっています。Homecomingの入替わりと同様、米版PBでは修正されています(従って邦訳は問題なし)が、英版PBはHCを底本にしているので、入れ替わったままです。英版PBは、版組が違っているのに一行入れ替え誤植の語順のままですので、元の形を類推するのは困難、全く変なことになっています。一番変なのは、Gauntlet(およびその後のDelRey新装版)で、 And on the empty scale dozen books. I made some minor adjustments. Opposite I laid my pen, my ink, my empty paper, my sixty seconds were ticking by. となっていて、誤植には気づいたものの、苦し紛れの修正をして意味不明の文章になってしまいました。これはDと同じ状況ですね。PB版を見るとか、RBに確かめるとかしなかったのか?Don Albrightは立派な書誌学者というが、これぐらい直せないとファンとはいえんぞ。それともRB本人の修正??まさかとは思うが・・・
さて、A~Fについて、種々の版を比較してみます。推測は交えず、私が所有していて確認できるものに限りますと、次の13種類に分類されます(他の版の所有者の補遺希望)。以前のBBSで一部不正確な記述をしているのに気づきましたが、いちいち訂正しませんのであしからず(汗
1. Ballantine HC, 1955(50部のpresentation copy, BBロゴが倒立と正立の3種あり、前2者が初版、後者が2版といわれるが、版組は同一) JM表紙・挿絵あり 2. Ballantine PB F139 (初版1956), F580 (2版1962), U2139 (3版1964), #02760 (4版1964), #01637(1971年版を所有), #32448 (1985年版を所有) DelRey32448 (1989年版を所有)の7種類の表紙があるが、すべて版組みは同じ。JM挿絵あり。最初の2つのみJM表紙 3. 英版Rupert Hart-Davis HC, 1956(初版), 1957(2刷) (この2つは同じ)以後の版は持っていないが、5刷まで刷られたらしい(現在実物を購入して確認中)。少なくとも最初の2つはJM表紙で挿絵あり。 4. Small Assassin(英版分冊PB、びっくり箱のみ該当)Ace H521(1962), Four Square 1234(1964, 1965), NEL 2816(1970) これら4種は誤植に関しては同じ。 JMなし 5. Small Assassin(英版分冊PB)Panther (1976) JMなし 6. Small Assassin(英版分冊PB)Grafton (1976) JMなし 7. October Country (英版分冊PB)Ace H422(1961) Four Square H422(1963), Four Square 1233 (1964), NEL 2817 (1970), Panther (1976), Grafton (1976) これら6種は誤植に関しては同じ。JMなし。 8. Knopf,1970 上のどれとも一致せず、新たに活字を組みなおしたらしい。JMなしだが、ゴヤの絵を挿絵として使用。私は初版のみ所持している。1982年までに少なくとも6刷が出たらしいが内容未確認。 9. Del Rey, Trade paperback, 40785, 1996 “May I die before my voices”と題する新しい序文がついた大判のPB。表紙はJMではないが挿絵はJMを採用。ここから改悪のEが始まった。 10. Gauntlet 愛蔵版1997。私は52部のletteredしか持っていない。初版HCの復刻(表紙はRBの絵に置き換え)と思われたが、誤植の面から見ると9番の内容でAを修正したもの、という不思議な版。JM挿絵のうち「風」の挿絵はオリジナルとは異なるバージョン(Drawings and Graphics所収のもの。はろ様ご指摘)に置き換わっている。挿絵が入替わっているのはこの版のみ。この時期には、少なくとも「こびと」と「集会」の原画は Mugnaini家にもBradbury家にもなかったことがわかっているので、「風」だけが原画が見つからず別バージョンを使った、とは考えられない。風のみMugnaini家にあった原画を使い、それ以外はHCからのコピーと考えられる。元にしたHCの「風」が汚れていたのか?理由は不明。 11. Simon & Shuster, PB, 1998 出版社が違うのに、表紙以外はまるで9のコピーという、不思議な版。 12. Avon HC, 1999 内容は9番のHC版だが、序文が”Homesteading of October Country”というものに差し替えられている。JM挿絵はあるが、表紙はご存知の通り最悪。何版まで刷られたかは興味なし(笑 13. Del Rey, Trade paperback, 2001 9番の表紙をJM表紙(オリジナルのものを画像処理でいじってある)に差し替えたもの。誤植に関しては10番と同じだがJM挿絵は9番と同じという、わけのわからない版。
ここで、各作品が雑誌に採録されたり、作品集に収録されている場合のあることに気づきました。古雑誌収集をしていない私には荷が重いので雑誌は両巨頭に振るとして、次のメジャーな作品集に絞ってみます。
14. The Stories of Ray Bradbury, Knopf, 1980. 15. Bradbury Stories, William Morrow, 2003. ダッドリー・ストーンのみ該当 16. Bradbury Stories, Easton Press, 2003. 15番の愛蔵版、1000部限定、JMの口絵つき。
横軸にA~Fの誤植、縦軸に1〜16を並べると、次のようになります。英版PBと14〜16に関しては、収録されていない作品を―としています。 A B C D E F 1.× × × × ○ × 2.× × × ○ ○ ○ 3.× × × × ○ × 4.− × × − − − 5.− ○ × − − − 6.− ○ ○ − − − 7.○ − − × ○ × 8.○ × × × ○ ○ 9.× × × × × × 10.○ × × × × × 11.× × × × × × 12.× × × × × × 13.○ × × × × × 14.○ × × × ○ − 15.− − − − − × 16.− − − − − ×
すなわち、完璧な版はないということですね。ただし、重大性には差があり、最後の3つが致命的ですので、最良のものは古い米版ペーパーバックということになります。JMのことを考えると、初版と2版ですな。こう見ていくと、Ballantine PB初版の翻訳がいまだに読める日本は幸せということか(2版が底本でないことは、創元旧版のJM表紙をみればわかります)。
こんなこともあって、私家版十月の英語版の必要性がますます大きくなりました(爆)
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